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甘蜜トラップ
第2章 快楽と堕落
「俺は橘の絵好きだよ。コンクールでよく見かけていたし、だから余計に驚いた。この学校に来て、橘がいて。才能があるのに周りはお前を簡単には認めないから納得いかなくてさ」
「……なんで」
そんなこと、言うの。
「ちょっと、話そうか」
まだ授業中でしょ、教師がなんてことを言うんだ。そんな風に思いながらも、先生を振り払って教室に戻ろうなんて気分じゃなくて、サボれるならもうなんでもよかった。
面倒臭い。
今日もやけに青い空だ。
校内に入ると、先生は裏階段を通った。私は後ろをついていくだけ。教室の前を通ると怪しまれるとでも思っているのだろう、けれど、怪しまれたって別になにもないのに。
サボり生徒を野放しにしている姿なんて見られたくないよね。分かる。
裏階段は初めは外にあるのに、上がると途中でドアがあって、そこから隣の校舎に渡る橋の部分がある。渡り終えると私が昨日瑞樹といたあの場所の真下に辿り着いて。そう、この一つ上で。
埃っぽくなってきた階段を上がると、昨日と同じ景色が見えた。
「なんでここに連れて来たの、先生。怪しまれるよ?」
「橘、昨日ここでなにしてた?」
「なにって……」
下からだと三階にあたる場所で、見上げたところで顔しか見えない。なにしてた、なんて聞く辺り察しはついてるんだと思うけど。
「浅木も一緒だったね」
「そう。瑞樹は友達だから……」
「友達でも彼氏でもこんなところだと不衛生だ。身体、大事にしなよ」
っ……!
知ってて、それが言いたくてここに?
馬鹿馬鹿しい。そんなの、関係ないじゃん。私の身体がどうなろうと誰も関心なんて示さない。
「先生こそ、」
「なに?」
「私をここに連れてきて期待してたんじゃないの?」
「なにを?」
なにをって。
掴みきれないこの感じ、むかつく。
「……ていうか先生は私が瑞樹としてたことなんで知ってるの? 勘が良いにしては鋭すぎだと思うんだけど」
顔しか見えない。そんなにエロい顔してた? なわけない。瑞樹はああ言うけど別にそんなに変わることないし、なによりあれだけの距離があって、たとえ赤くなっていてもそんな火照った顔なんて下からでは分からないだろう。
「それは守秘義務で」
一体なんの。