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甘蜜トラップ
第2章 快楽と堕落
柳瀬は私を見て困ったように微笑む。本心で頷いていないことなんてお見通し、みたいな表情。
目が合うとそらしたくなる。
キラースマイル響先生とは違うけど、共通点はあった。鼻梁のすっと通った端正な顔立ちだということ。
おまけに柳瀬は一切の日焼けを感じさせない程に白い肌と、骨張った腕と指と、少し斜めを向いたときに浮かぶ首筋の色気なんかも持っていて、見た目でいうなら私のストライクゾーンでもある。ただ、だからって惚れるかは別の話で。
「じゃあ、私もう行くから」
階段をおりようと手すりに手をかけた途端、私の手を覆い隠すように手の甲を掴まれた。
「橘」
「なに?」
振り返るとすぐ後ろに柳瀬がいて、少し驚いた。本当、文句の付け所がない顔。これに関しては嫉妬の感情さえ湧いてこない。性別が違って良かった、とは思う。
先生、私のこと問題児だと思ってんのかな。
「ああ! 先生別れのキス忘れたの?」
「からかうな」
「ごめん、で、なに」
「放課後空いてる?」
「……? まだなにか?」
「空いてるなら美術準備室に来て」
「今日って部活休みなんじゃ……?」
「だから来いって言ってんの」
「わ、分かった」
なんなの。
急に険しい顔をして。