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甘蜜トラップ
第2章 快楽と堕落
ーー教室に入った頃にはちょうどお昼の時間で、各々が昼食をとろうとしていた。
「千歳」
「あ、瑞樹」
「売店行かね?」
「あーうん」
同じクラスでもないのに普通に入って来てるし、それで周りが少し遠のいているのも気にしてなさそう。
私が割と人に合わせて面倒事を回避したがる性格だからか、瑞樹みたいな対極的な人には少し憧れる。だからつるんでるってのも多分ある、と思う。
「なんかあったのか?」
「え?」
「学校来るの遅かっただろ。お前が昼に来るのは良くあることだけどいつも昼飯までには来てたしなーって」
「寝坊しただけだよ」
「なーんだ寝坊かよ心配して損した。てっきり俺はお前が昨日の夜誰かに腰砕けにされて動けねえんじゃね? って思っちゃったわ」
「はは、なにそれ」
瑞樹はあまり人の詮索をしない。基本的に突っ込むところは突っ込んで引くときは限りなく引いてくれるから、他人の心にズケズケ踏み込んでくるような無神経ではない。私のことをなにも知らないはずなのに、なにもかも知ってるみたいに思うことがある。
廊下を歩いていると何人かとすれ違って、皆が皆目を合わせてすぐにそらした。嫌そうな顔、あからさまにしなくたっていいじゃん。
誰とも目を合わせたくなくて真正面だけを見ながら廊下の中心を堂々と歩いた。
「お前怖いから皆引いてんじゃん」
「いやどっちかというとっていうか一択しかないけど怖いのあんただから」
「なんだよ俺のどこが怖いわけ」
「さあ、見た目じゃない?」
真面目な生徒が多いこの高校で白に近いくらいの銀髪なんて一人しかいない。汚い金髪とか色の抜けた茶髪はぽろぽろ見かけるけど、こんだけ細かに手入れがされてある銀髪は稀だよなあ、って尊敬するけど。普通に汚い金髪の方が危なそうな気がする。偏見かな。
「ピアスまた増やしたでしょ」
「耳だけなんだからいいじゃん」
「嘘、センタータン。知らないわけないから、私も教師も」
「へえ、じゃあなんで誰も俺に言わねえわけ」
「だからあんたが怖いんじゃないの。前の学校で教師ぶん殴って退学になったから編入してきたとかいう生徒」