この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
甘蜜トラップ
第2章 快楽と堕落
甘やかされると誰でもいいって思ってしまいそうになる。私が馬鹿なだけだって分かってるけど制御出来なくなるときがある。
お腹の奥の方からぐわああって溢れ出しそうになる鬱々しいそれを誰かに受け止めてもらいたい欲求と、隠したいと思う理性と。
胸の中にぽっかりと空いた穴のような空白を埋めてもらいたい気持ちで、誰かを求める。優しくされたら涙が出そうになる。
勿論、本心で誰でもいいって思ってるわけじゃない。でも今だけでいいからって勝手な理由で箍が外れてしまうから、私はあの日、山中を困らせた。
「先生、山中と私のことを聞いてどう思った? どうせいろいろ聞いてたんでしょ」
「嫌だなって思ったよ」
「……不快に思うのは正解だよ。先生は間違ってない」
そっちが普通の考え方なんじゃないかなって分かってる。教師の立場で自分の憧れる人が自分の将来を壊しかねないことをしているって知ったら、そりゃ嫌だ。私だったら『女一人になにを賭けてんだよ、馬鹿じゃねえの』って言いたくなる。
「違うよ」
「なにが?」
「橘のことは俺も昔からよく見てるし、だからなんとなく山中先生にそういう風に見られてるのが嫌だったんだよ。橘が思ってるみたいに山中先生自身の心配はしてなかった。俺は橘みたいに優しくないから」
「……なにそれ、お父さんみたい。ていうか、なんで、優しくないし私」
なんで山中の将来を心配するとかそんなことが伝わってしまったんだろう。言ってもないし、顔にも出てないと思う。
「優しいよ、橘は。いっつも寂しそうだけど」
「はは、やっぱりお父さん?」
寂しそうとか、教師に言われることじゃない。
歳はそう離れていないけど、ある程度の歳の差は当然のようにあって。それはときに大人の色気のようなものを放っていた。
馬鹿になりそう。