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甘蜜トラップ
第2章 快楽と堕落




「千歳、」


腕を引いて抱き寄せられると、すっぽりと瑞樹の腕の中に埋まる。絶妙に心地の良い身長差だと思う。

ただこれはいつものことで、瑞樹が力を込めないため逃げ道があることを私はもうだいぶ前から知っていた。かがむようにしてするりと抜けだすと瑞樹が空気を抱きしめるような仕草をする。それがいつもおかしくて笑ってしまう。


「瑞樹お腹空かない?」

「空いたけど」

「ファミレスでも行く?」

「まじで? え? 俺はずっと待ってたんだぞ玄関でワンッて。それでも餌を与えてくれないお前はなんだ悪魔か」

「だから餌食いに行こって言ってんじゃん。お手」


手を出して瑞樹の反応を待つ。


「ワンッ! じゃねえよてめえナメてんのか食ってやろうか」

ノリが良く私にてのひらを被せてきた瑞樹に、よしよしと頭を撫でてやると「やめろ」と言いながら少し嬉しそうだった。

本当可愛い。

「つーかなんかお前から男の匂いがする」

「えー気のせいでしょ」


嗅覚まで犬じゃん。


「分かる。男の勘」

「ごめんなんか分かんないけど女の勘よりアテにならなそう」

「失礼な奴だな。そんなこという千歳にはお仕置きだー」

「え、なに、」





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