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甘蜜トラップ
第2章 快楽と堕落
「そんなことは私だって分かってるよ」
「ああいう親の子供ってあの親あってのあの子だなって感じで見られてんだろうな」
……。
「ごめんそれ分かるけど全部だとは思わないっていうか思いたくないっていうか」
「悪い、いまのは俺の偏見だわ。俺の親が非常識だったからさ、クソババアの息子だからってクソガキのレッテル貼られっぱなしだったんだよ。根に持ってる」
「あー私もそんなもん」
全てが親のしつけのせいだけではないと思うけど、マナーのなっていない親を見ている環境にも原因はあると思う。影響を受けるか受けないかは人それぞれとは言っても。
私の父は昔派手に飲食店で暴れたことがある。そのときに周囲の人々に向けられた視線は鋭く痛かった。この男のせいでこんな目に遭わなければならないなんて最悪だと思っていた。
店員さんが注文を取りに来て、デミグラスソースのハンバーグとミートソースパスタを頼んだ。注文を繰り返したのちに店員さんは奥へ去っていく。
「去年かなー、ファミレスってファミリーのあれだから騒いでもちょっとくらい我慢してよって言われたことある。あんたら学生だっていっつもゲラゲラうるさいじゃない、って。私がうるさくしてるわけじゃないのに学生って一括りにされたことが気に入らなくてさ、1ヶ月くらいファミレス避けてた」
「ぶはっ、たった1ヶ月で終わったのかよ」
「私の栄養源だから……」
「まあコンビニのおにぎりばっか食ってた頃よりはマシだろうな」
「バイトしてるからこんくらいいいじゃん」
「なんのバイトしてんの」
「コンビニ店員」
「ふうん、俺もバイトすっかな。紹介してよコンビニ」
「えーやだ。飯代と携帯代くらいは自分で稼がないとって思ってるだけだしあんたと一緒とか嫌っていうか」
「なんか失礼じゃね?」
親が嫌い。
この言葉だけで表現するとなにか物足りなさを感じるこの憎悪にも似た感情を制御するために自分で稼ぐ。あの親に金を要求することがどれほど困難か、もう考えるのも億劫だ。