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甘蜜トラップ
第2章 快楽と堕落
私のデミグラスソースのハンバーグと瑞樹のミートソースパスタが並べられて、お互いに腹が減っていたことを見せつけるかのようにぺろりと食べてしまった。
外に出た頃には日が暮れて真っ暗とまではいかずとも夜だと感じられる。
「ちょっと遊んで帰らねえ?」
「どこ」
「ゲーセン」
「えー」
「なんだよゲーセンが嫌ならパチ屋?」
「ふざけてんの……?」
「なんだよ怒んなよ、なにが気に障ったわけ」
「なんでもない、ゲーセンでいい」
「わっかんねー、まあ機嫌直せよクマのぬいぐるみ取ってやるからさ」
瑞樹って馬鹿だな……。
でもなにも知らない人に対して勝手にムッとしてる私の方が馬鹿だ。パチンコ屋なんて行ったら父親と絶対遭遇する、って咄嗟に。
ゲーセンなら行かないだろうし、気分転換もアリだ。ていうかクマのぬいぐるみがあるかどうかも分かんないのに。
大型ショッピングモールの中に入っているゲーセン。女子高生がプリクラの周辺に集い、男子高校生がお菓子や小型電マに興味を示している。……瑞樹も例外ではなさそう。
「なあ千歳、電マあんだけど」
「うん」
「興味示さないな」
「考えてること丸分かり過ぎてつまんないっていうか」
「そこは興奮しろよー」
少しでも気分を晴らすために笑わせようとしてくれているのは分かる。瑞樹を恋愛対象として見られるようになったら楽しいこともあるんだろうなあって思った。
そんなことを思ったのは多分初めてだ。