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甘蜜トラップ
第2章 快楽と堕落
瑞樹の家に帰って一人で待っていると、日が暮れて暫くしてから玄関が開いた。
「鍵閉めとけよ千歳」
「……ごめん」
「いっつもお前が言ってること言ってんだけど」
「ごめんって」
「別にお前がいっつも言うから言い返してんじゃねえぞ、強盗でも入って……いや、こんなボロい家には来ねえかもしんねえけど、俺は男でお前は女だから気を付けろって。もし嫌な奴が来てもお前じゃどうしようもねえから」
嫌な奴?
「……分かった」
「はあ、風呂入るわ」
「うん」
疲れた顔をしていた。
人を嫌ってはいないけど人付き合いが下手くそな彼が頑張っている。私は逃げてばっかりだ。
しんどい。
声に出すのも憚られる言葉に思えた。
だって私はなんの努力もしていない。
瑞樹が風呂を上がる前に私は家を出た。メールとかLINEとか直接声をかけるとか後から考えればなんとでも手段があったはずなのに、置き手紙という古風なやり方で出てきてしまった。
いっつも一緒にいる瑞樹。
なにかが変わっていく感じが怖い。儘だ。
自分の家に帰る途中、LINEが入っているのを確認したものの《急に用事が出来たから帰る》としか返せず、足を止めた。
自分の家に帰ってどうするんだろう。
滅多に家には帰らないし、帰ったって父親がいるかいないかだし……いたら、どうしたらいいんだろう。
ファミレスのこじんまりした二人席に教科書とノートを広げる。勉強って気分でもないけど、なにかしないと時間を潰せなかった。