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甘蜜トラップ
第2章 快楽と堕落
翌日、朝早くに瑞樹から電話があって出ると『お前自分のことしか見えてないだろ』と言われ、どきりとした。昨日からそう、少し苛立っていると声色で感じ取れた。
言い返す気分にはなれない。
「瑞樹なんかあった?」
『暫くうちには来るな。来ても入れねえから』
「え?」
ぷつり、通話が途切れる。
もしもし、と呼びかけても反応がなく機械音だけが耳の奥に届く。理由も分からないまま一方的に切られてどうしたのか全然納得いかない。
思い返してみても心当たりがない。昨日は結局自分の家に帰ってすぐに部屋に引きこもって、瑞樹からの連絡も確認したけど特になかった。
朝っぱらからどっと疲れて学校に行く気力さえ失いかけたけど、父親が帰ってこなかったことだけが唯一の救いか、安心して部屋の外に出られた。
登校中も周りの生徒と目を合わすことなく、教室に入っても挨拶をすることもなく、席についてじっとしていると時間が過ぎていくような毎日。瑞樹からの連絡は一切なく、昼食の時間になっても顔を見せに来ることもなく、腹が立つくらい暇だ。
つまらない。
なにが悪かったのかいまだに分からないままなのに、なぜか瑞樹と喧嘩をしてしまったようなモヤモヤとした気持ちになる。
もうあんな奴どうでもいい切り捨ててやるって言えるくらいの傲慢さや余裕があればなって思ってしまう。私には他につるむ相手がいないしセフレも瑞樹だけだし、無性に孤独感に苛まれた。