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甘蜜トラップ
第3章 感情と強制
色々と勘繰ってしまう。女ってなに考えてんだろう、ていうか前田さんって私のなにが気に入らないんだろう。明らかなというと違ったときに恥をかくけど、それでもやっぱり悪意を向けられていると捉えてしまう。
だから余計に腑に落ちない。
前田さんに対してなにかしたつもりもないし。
「あれ、この子泣いちゃってんじゃねえの? 杏果(キョウカ)、俺もう帰るわ」
「えっ、龍君帰っちゃうの? 回ってかないの?」
泣いてねえよって言いたいけど、口を開くのも更にそこから声を出すのも億劫で、もうどうでもいいやって思った。
前田さんの下の名前が杏果だってのも初めて知ったし。
龍君という人物が教室を出て、私は前田さんの方を向く。
「なに? 泣いてないじゃん、男に媚びるのやめたら? 龍君はあげないから」
「ねえ外で話さない?」
「なんでよ」
「店員がぐちぐち言ってる店に誰が来たいと思うわけ、ちょっと頭使ってよ」
「はあっ!?」
パシ、ッ! と、とても軽快な音がした。叩かれた私の頬は痛いだけだけど頭では愉快だなと思ってしまうくらい良い音だ。
教室の中心でこんなことをしたせいで、全員の視線がここに集う。だから外に出ないかって言ったのに、最悪だ。
痛い。
「ヤマ先生もミッキーも奪ったくせに最低っ……! 次は誰狙うわけ!?」
今度はヒステリーか。
もう面倒臭い。
ミッキーって誰。
ネズミか?
「ごめんなさい。とりあえず外出ない?」
「そんなに人目が嫌なら全部ぶちまけてあげようか? ヤマ先生と橘さんのこと」
ヤマ先生って山中のことか。
本当なんで急に嫌な目に遭わなきゃいけないの、直接対決的なことは避けてきたのに。
厄日だ。
仕組まれていたのか、今日のこの時間のために私は関わらないようにさせられていたのか。被害妄想のような気もするけど完全に否定しきれない辺りがちょっとつらい。