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甘蜜トラップ
第3章 感情と強制




「山中と私になんかやましいことがあったって証拠でもあるなら言えば。私はあんたの言われたくないこと知ってるけど」

「は、なにそれ……! 脅すの!?」


私は人として好きだった。慕っていた。それを恋と呼ぶのならそうなのだろうと錯覚するほど本気で好きだった。柳瀬の言うように山中は私に愛を返してくれた。嘘、だったのかもしれないけど……それでも私の身体を求めるようなことは一切なくて。

私は証拠なんて残さない。馬鹿じゃない。大事な人に迷惑なんてかけないし失わない最善の方法を選ぶ。

前田さんがなにかをしたという確信はないけど誘ったのは間違いないって思っている。なにか弱みを握って行為に及んだのかもしれない。そう考えずにはいられなかった。犯されたとか騒いで、結果自分が被害者になれば都合が良いって。

もう、そうね。
って思う。

賑やかだった教室から人が減っていく。こりゃ赤字だ。クラスメイトもため息をついたり私たちに迷惑している。


「ごめん」

「謝るってことはそれ相応のことをしたってことでしょ!? 分かっててやったんでしょ!?」


彼女は一体なんの話をしているんだろう。

腹が立ったけど、頭が痛くなるけど、手をあげることはしたくなかった。だから謝った。どうすることが正解か分からないし。


「っ、ふ、っく……ぅう、ひどい……」

「橘、お前言い過ぎだろ」

「んな泣くなよ前田」


ごめん。
もう帰りたい。

泣いたら男が庇う。私なにか言い過ぎた? 謝ったよね? 泣いてる女に弱い男は分かるけど泣いてる女見てうぜえなって思う女はここにいないわけ? 私の味方とか別に要らないけど中立な人がいないとか不可解だ。

被害者って騒いで噂の的になっていつから周りを巻き込んでこんな大きな組織を作ったんだ? 私はクラスのなにも見てなかったんだってことか。





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