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甘蜜トラップ
第3章 感情と強制




「柳瀬は優しいじゃん。この学校の先生って皆結構ピリピリしてて……山中のことがあって余計に。だからあんただけはちょっと他と違うんじゃないかなって思って」

「教師にあんた呼びするお前の方が俺は不思議だよ」


喉を鳴らして笑う。
そうやって怒らないじゃん。甘やかされてると勘違いする。

ぽっかり空いた穴に柳瀬が入り込んでくる。するりと滑らかに、それでいいんじゃないって勝手に思いたくなるから怖い。

柳瀬は窓を開けて煙草を吸い始めた。


「先生」

「橘だけだよ、俺が生徒の前で吸うのは」

「……なにそれ」


ちょっと嬉しい。

先生の横にしゃがみ込んだ。人気のない場所で脚を伸ばしていると、「スカートめくれてる」と指摘された。


「見た?」

「見てない。真面目だから見る前に教えちゃったよ、あー、見ればよかったかな」

「えっ……?」


首を動かして柳瀬を見上げるとまた笑っていた。やけに楽しそうだーーと思っていると、その喉が少し動く。ぱち、と音がしそうなくらいぴったりと目線が合った。


「冗談だよ。ガキの下着には興味ないかな」

「私ガキじゃないし」

「じゃあお子様?」

「はあっ? やだやめてそういうの」

「やだとか言ってる辺り子供だよ」


また私から目をそらして窓の外に向ける。煙がゆらりと揺蕩い、流れ込んできた風とともに消えた。




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