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甘蜜トラップ
第3章 感情と強制
「俺を馬鹿にしてる?」
「なんでそうなんの……違うよ」
「じゃあなに? 口封じは終わったはずだけど」
ただなんとなく、したいと思った。そんな曖昧で幼稚な回答では柳瀬を納得させられる気が1ミリもしなくて、吐き出しそうになった言葉を飲み込む。
柳瀬はそこら辺の男子とは違う。いままでの同級生や上級生のセフレだったらしたいと言えばするし、そこに恋愛なる感情がなくとも構わないし当然の如くストッパーも存在しない。延長線上に身体の関係が築かれるのも当たり前で。
次の言葉を探した。
「先生は本当は嫌だった?」
「嫌だったよ」
「……っそ、っか」
ちょっと。
なんでいま息が詰まった?
勝手に痛いと思ってるのは馬鹿だからか。思うようにいかないことに苛立つとか本当に自分が有り得ないんだけど。
なんか、居づらい。
立ち上がって教室に戻る旨を伝えようとしたところ、「シー」っと指を唇につけるようなジェスチャーを示された。
「やなーー」
「黙って」
「え、」
煙草を消して持ち歩いているであろう灰皿に押し込む。
彼が時折見せる表情。悪戯っぽく笑うのに、その奥には黒い闇でも隠されているみたいに冷たい目。その矛盾が私の中で色気に変換されるのは私の頭がポンコツだからかもしれないけど、今日の柳瀬は教師じゃない。
ギャルソン姿で私を壁に追いやる。まるで覆い被さるように私の視界を閉ざして、壁についていたその手で耳を塞がれた。
「せん、……ん、!?」
なにが、起きてる?
柳瀬の顔が目の前にあって、唇が触れたまま。長い睫毛が私の視線を虜にさせる。目を開けたまま呆然としていると離れて「下手くそ」と口パクで言いながら笑われた。
閉ざされた耳の向こうでは聞き慣れた声が近づいてくる。人の気配、これってーー
「み、ず……っん、ちょっ」
なに、どういうこと。
え? いま拒否したの柳瀬だよね? なんで私が無理矢理されてるの。
横目で見ても手が邪魔をしてなにも見えない。音は聞こえているけど。
「ねえミッキーなんで私を助けてくれなかったの!? 殴られそうになってたの見てたでしょ!?」