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甘蜜トラップ
第3章 感情と強制
「私に勇気半分頂戴」
「なんの話かわからないけど自分で生み出しなさい。人から貰うもんじゃない」
「ケチ」
また煙草を吸っている柳瀬の横にしゃがみ込んで私はまた自分の中に閉じこもるように脚をたたんだ。体操座りってお尻痛いけど。
「下から人が来たらパンツ丸見えなんじゃない」
「別にいいよ見てけ見てけここまで上がってこれる人がいるなら」
「なにそれ? 下でなんかあった?」
「察しはついてるんじゃないの……」
「さあ、なんのことだか」
「……瑞樹が、前田さんとしてた」
「なにを?」
見上げても柳瀬がこちらを向くことはない。なんか不安になるから目合わせて欲しい。
じっと視線を送っても向いてくれないから、顔を膝の上に伏せる。
「セックス。埃っぽいところ色気ないよね。前田さんそれでもいいんだーって思った」
「あーそれは嘘だ」
「本当だよ」
「ふうん。前田に嫉妬して戻って来ちゃったわけか」
「違うし」
くすくすと笑う。馬鹿にされてるのかもしれないけどもうそれでも良かった。一人でいるよりは幾分かマシなような気がする。
家にも帰りたくないし瑞樹のところにもいられないしどうしようもない。どうしたらいいんだろう。なにも考えたくない。佐々木とかなんとかとかなんとかとかセフレは何人かいたけど、皆同じように高校生で、当たり前のように大体は実家暮らし。外泊は女の子同士ならいいけど相手側の両親が私を帰そうとする。きっと心配してくれてるんだ、ってことは分かるけど。
帰されると困る、とか言えないし。
「橘は浅木のことどう思ってるの」
「どうって、友達……」
「だったら、もうちょっと踏み込んでみれば。俺がこの学校に来てから浅木が女子といるのは橘だけだったよ」
「……?」
「大丈夫だよ、友達なら」
「セックスフレンドでも?」
「お前もうちょっと恥じた方がいいと思う」
瑞樹のことが好き。
前田さんはそうなんだろう。
別にそれは好きにすればいいと思う。私は別に恋愛的感情で瑞樹を好いてるわけじゃないから人の恋路を邪魔したいとは思わない。