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甘蜜トラップ
第3章 感情と強制
ただ、やっぱり、彼女が私に瑞樹を奪ったっていうなら彼女がなんで山中とあんなことしたのか、私にとっては永遠の謎に思えてならなかった。許せないっていう邪悪な感情が胸の奥から湧き上がってくる。山中のこと好きだったってせめて言ってほしい。それだけで報われる気がするから。
「先生、今日泊めて」
小声でぽそりと呟いて、彼を見上げる。
「馬鹿なこと言わない」
「だって、さ」
「なに?」
「今日一人になったら私死んじゃうよ」
「……」
じっと見つめられて。無表情で。
あ、やばい。怖い。
そっと目をそらす。
「ごめん嘘だよメンヘラガールじゃないから帰るからそんな怒んないで」
俯いてなにも見えない状態にする。体操座りってそういうときに便利だ。丸まった背中の向こうでふわりと香水が香る。服が擦れる音がした。
なにかと思って目を開けて左横を向くと、柳瀬がしゃがみ込んで煙草を吸っていた。
「良いよ」
「ええ?」
素っ頓狂で情けない声が出て、はっと息を吸い上げた。柳瀬いまなんて言った? 頭の中でリピート。
「なんで自分から言っておいてそんな驚いた顔するの」
「いや……本当に?」