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甘蜜トラップ
第3章 感情と強制
柳瀬の家は一般的に言う高級マンションの一室らしく、入る前にブラウンのトレンチコートのようなものを羽織らされた。
「変に疑われると困るから着てて」
「あ、うん」
制服を着た明らかな女学生を連れて入るのも怪しいよね。
オートロックを解除して中に入り、エレベーターを降りた先には部屋が二つしかなかった。
「ねえこれどういう間取りなの……」
「入れば分かると思うけど」
こう言ってはなんだけどつい最近まで非常勤講師で絵画教室のバイトをしていた人が常勤講師になって部活顧問をしたとしてそれで買えるような家ではなさそうだ。
「お邪魔します」
中に入ると、黒と白で統一されたシックで絶妙にラグジュアリーな雰囲気のデザインだった。ミステリアスさを兼ね備えた家なんて私は他に見たことない。
「服貸して」
「あっ、」
コートね。
手渡すと、すぐにどこかから持ってきたハンガーにかける。
「とりあえず手洗って来な」
「はい」
「なんで改まってるの?」
「いや……緊張して」
ボロ家の方が落ち着くとか思ってる自分がいる。長いことそういう家で生きてきたし、不慣れ感がやばい。
とりあえず促されるがままに手を洗い、私のこの洗っても尚汚い気がする手を拭くのも恐れ多いような真っ白のタオルに手を乗せると、信じられないくらいふわっふわだった。