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甘蜜トラップ
第3章 感情と強制
「お前浅木と風呂入ってるの?」
「え、なに?」
「風呂でああいうことしてないよね?」
「それは……アフターピル飲んでるし」
「そういう問題じゃない。身体を大事にしなって前も言ったよね」
「別にいいじゃん」
「なにも良くないよ」
「なんで? 私の身体が駄目になったって関係ないでしょ、子供産むつもりもないし育てられる気もしないしそもそも今だって生きてたくもな、っ!」
柳瀬に後頭部を掴まれて胸に押さえつけられた。呼吸が苦しい。ああ、でも柳瀬いい匂いする。
ソファーが揺れた。
はあ、と小さなため息も聞こえる。心臓の音が耳に直に届くようで緊張して、でもどこか安心感があって。
「せん、せ」
「泣かなくても」
「泣いてない」
泣いたつもりはない。
でも、確かに柳瀬のシャツは少し濡れていた。
「気が強いけど泣き虫、我儘、自己中心的、セックス依存症。自暴自棄? 昔は素直で可愛かったけどいつの間にか変わるもんだね」
「なにそれ、うざい」
「口が悪いね」
冷たい言葉を吐いて、でも表情が妙に優しくて悲しそうで寂しそうで、胸の奥がぎゅっと掴まれたみたいに痛む。迷惑かけたんだ、私が。
「俺もお前も死なない限り生きてるんだよ、しょうがなく生きてるときでも痛い思いやつらい思いするの嫌でしょ。痛みを和らげようとしたらお金がかかるかもしれない。どうせ生きてるなら楽しいのがいいし楽をしたい。死にたいと思ってても別にいい、けど本当に死ぬ日までの自分を大事にしないのは違うんじゃないかな」
「……柳瀬」
「説教たれんなって言ってもいいけど。柄にもないこと言ったし」
「ごめん」