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甘蜜トラップ
第3章 感情と強制
「ん?」
「私、別にセックス依存症ってわけじゃないと思う……なんか、突然ね、空っぽになるのが怖くなって。それを埋めてくれるのが瑞樹しかいないから……でも私も瑞樹も上手く恋愛とか出来ないし、そういう関係になること望めないからセフレっていう関係に留まってる」
「うん」
「瑞樹、のことは好き」
「それで?」
「好きだけど恋愛じゃなくて好き。人として好き。あるじゃん? 人格が好きっていうか相性が良いっていうか、そういうの。だから離れたくなくて……狡い、のかも私」
「浅木を独り占めしたいってこと?」
「そうじゃなくて、私他に友達いないからさ、大事にしたいっていう思いが行き過ぎてるみたいな感じはあるかも。穴が埋められなくなりそうで怖い。独りになるじゃん、もう惨めな思いしたくない」
ーーなに、語ってるんだろう。
「橘」
「やな、」
ふわりと手を頭に乗せられ、よしよしと撫でられる。子供扱いって分かってるけど少し安堵する自分がいる。一人より幾分かマシだと思っていたその感情が僅かに揺らぐのを感じた。柳瀬といるとほっとする。瑞樹とはまた違う感じ。
でももしかしたら私は無意識に瑞樹と離れた寂しさを埋めようとしているんじゃないか、って不安になった。馬鹿だから、単純だから、優しくされるとおかしくなる。
ぽろぽろというよりはぼろぼろと、重みのある大粒の涙がこぼれ落ちた。
「やな、せ」
「分かんないだけだよ、友達の作り方が」
「っ、う」
「浅木とは身体以外の付き合いをすればいい」
「できな、い。だって瑞樹は」
「うん?」
「瑞樹は前田さんとこ、行っちゃうし、今更セックスなしでどう付き合ったら良いか分かんないっていうか……物足りなくなって、やっぱ依存なのかな?」
「本当に橘の身体しか興味なかったら浅木は昼飯一緒に食べたりしないと思うよ。彼女がいても単独行動好むくらいだし」
「……え?」
聞き逃さずに拾った言葉を頭の中で再生する。
柳瀬はしまった、と困ったような顔をした。