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甘蜜トラップ
第3章 感情と強制
「柳瀬ってさ、なんで瑞樹のこと色々知ってんの? 私のこと知ってるのは分かったけど」
「前の学校で生徒だったんだよ浅木が」
「あ、瑞樹の前の学校か。最初の頃に瑞樹に関わらない方がいいって言ってたのも関係あるの?」
「……そうなるね。でもこれは彼のプライバシーに関わるから俺からは言えない」
「そっか。うん、瑞樹には聞けそうにないや。落ち着いたからお風呂は入ってくるね」
「お湯張ってるからゆっくり入っておいで。バスタオルは俺の、いや、新しいの出すからちょっと待って」
「え、いいよ柳瀬ので」
「そう?」
「うん。ありがと」
「下着は洗っておくから洗濯機に入れておいて。着替え、は入ってる間に用意するからどうしようかな、上がるほうが早かったらとりあえずバスローブでも着ててもらえれば」
「分かった」
私をバスルームに案内して、柳瀬は脱衣所の棚にあるタオルやバスローブを指差す。
頷くと柳瀬は私に背中を向けてリビングへと戻っていく。服を脱いで洗濯機の中ににそっと置き、お風呂に入った。えらく広い風呂場だな、と突っ込んだのは言うまでもない。
熱めのシャワーを浴びてシャンプーで頭を洗い、その後ボディーソープで体を洗う。どちらもユニセックスな商品でシャンプーは柑橘系、ボディーソープは石鹸の香りで爽やかな良い匂いがした。
湯船に浸かるとやけに静かで、ため息をつく。シャワーばかりでお湯に浸かったの久しぶりかも。あったかい。
壁が一面だけ黒いバスルーム、すごいおしゃれだなあ……と思いながら脚を伸ばした。
色々、考えてたことがある。瑞樹のことも前田さんのことも、たったそれだけのことだって言われたら多分そうだなって思うけど、私の中では解決しきれないから鉛のように重くて、でも、柳瀬の前だと不思議なくらい全部飛んで行った。
そういう変な力を持った人。
悩みが解決したわけではないけどどうにかなる気にさせてくれる。摩訶不思議。
あー、温度ちょうど良いし眠くなってくるな。