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甘蜜トラップ
第3章 感情と強制
「だって?」
「したい、と思った」
はだけたバスローブをさっと直したものの、今更意味がないと思われているのを感じる。
「どれだけ欲求に素直なわけ。別に悪いことだって言ってるんじゃないよ、ただ男の家に上がってするなって言ってんの、分かる?」
「分かんない」
「馬鹿なの? 分かっててやりなよ、せめて」
「……ごめんなさい」
こちらに寄ってくる柳瀬と目を合わさざるを得なくなり、そこでようやく顔を見た。怒ってる、絶対。でもほんの少し困惑してる。
目の前でソファーの背もたれを挟んだまま私の後頭部を掴み、柳瀬の胸に押し付けられた。でもさっきみたいに呼吸が苦しくなく、やけにはやい柳瀬の鼓動が聞こえるばかり。
「誘ってるって思われても自業自得だから」
「も、もうしない……」
「俺の名前呼んだくせに」
「聞いてたの?」
「どういうつもりで呼んだの」
おかしい。
ドキドキしてる、私も柳瀬も、多分。
間違いだったらもう私の頭が壊れているのか相当の馬鹿か。
「柳瀬に……て、しい」
「なに? 聞こえない」
「柳瀬に、して欲しい、って思って呼んだの。柳瀬としたい」
「信じらんないんだけど」
「空いた穴を埋めたいんだって分かってる、柳瀬のこと犠牲にしようとしてるってことも分かってる、けど……」
瑞樹に依存してたんだ、と。
ようやく気付いた。
共依存だと信じて疑わなかったそれが思っていたよりも脆くて私からの一方通行だったこと。それが、しんどい。愛情は平等に欲しい。あげた分より多少少なくても構わないけど少しだけ執着してもらいたい。欲張りなのは分かってるけど、簡単に捨てられるとさすがに苦しい、かな。
「危なっかしいって本当」
「じゃあ先生が埋めてよ、優しくされたらすぐこんなんなっちゃうのどうしたらいい? 教えて。贔屓してくれるんじゃないの?」
「橘」
「嘘、嘘だよごめんね先生。困った顔しないで」