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甘蜜トラップ
第3章 感情と強制
「狡いな橘は」
「柳瀬……?」
きつく抱きしめられて、鼓動は更に勢いを増した。おかしいって分かってるけどどうしたらいいか分からない。だって私はこれしか知らない。こうすることでしか表現出来ない。
先生、大丈夫だよ。
柳瀬の唇に口付けて、一度離したのちに強引に押し付けた。鼻を塞いだら一緒に窒息出来るんじゃないかって想像する。
抵抗しようとする柳瀬の首に腕を回して離れられないようにした。逃がさないように捕らえて、次第に彼は抵抗をやめた。
大丈夫だよ、私が誘ったんだ。
柳瀬は悪くない。
それでも彼の表情には僅かに翳りがあって、どこか不安気で、掻き消すように誘う。
「……橘」
「今日だけ、ね、柳瀬」
「駄目だ」
「説得力ないよ、先生の物欲し気な顔もっと見せて……私を独りにしないで」
「子供のくせに」
ぐい、っと強く腕を引かれ、そのままどこかへ連れて行かれる。私の絡まる足も関係ないって言われるように強引に、入った部屋が寝室で、それがやけに嬉しかった。
だってこれで私はひとりぼっちにならなくて済む。
柔らかなベッドに優しく押し倒されて、柳瀬に向かって微笑んだ。彼の顔にある翳りはいまだに消える気がしないけど、たとえ罪悪感でも彼の中に私を埋め込めるのならもうそれでいいんじゃないかなって悪魔が囁く。
「やな、せ」
「なに?」
「キスして」
私を宥めるように優しく唇が触れ合うだけのキスをして、それと釣り合うように頭を撫でられた。髪を掬い、耳にかけ、前髪をあげて裸にされた額にキスを落とす。
いつも見せる冷たい瞳からは想像もできないくらいに温かみを感じた。胸の奥がくすぐったくなるような感覚に瞼を閉じると、分かっていたかのように瞼に唇の感触が伝わった。
「柳瀬、もっと」
「わがまま」
欲求のままにおかしくなってしまいたいのに、柳瀬のキスには理性が感じられる。だからこそそれを壊してしまいたいと思った。
どうすれば私以外見えなくなるんだろう。たった1日でいい、1時間だけでもいい、一瞬だけでいいから理性を忘れた姿が見たい。
「聞いて、なんでもするから今日だけ、お願い」
「今の言葉覚えときなよ」
「っ、」
じり、と焼けるように熱い。欲しい。
手に入れたい。叶わない気がするからこそ余計に。