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甘蜜トラップ
第3章 感情と強制
ーー寝て起きたら朝が来る。
びっくりした。生理が来たからびっくりした。なによりも生理痛が酷くてベッドからおりようとしところで転げ落ちたことに一番驚いた。頭打って痛い。お腹も痛い。
生理前だろうなってことは分かってたけど……なんで今日。
なんとか起きて、リビングに向かうと柳瀬は料理をしていた。なんとなく生理のことを言いづらくて勝手に家を出て行こうとしたところ、玄関の音に気付いたらしい柳瀬に呼び止められて渋々訳を話した。
結果、ロキソニンと水を手渡されて家で留守番という形に至る。
「はああ……ああ……お腹痛い……」
口に出すと余計に痛い気がするけど、それでも口に出さずにはいられない。
ていうか、ナプキン買ってきてくれるとかなんなの大人って感じがぷんぷんする。たとえば同級生だったら『とりあえずなにかあったら困るから一緒に行こう!』とか言われそうだな。
そう考えるとやっぱ柳瀬って経験豊富そう。色んな女の人と……いや、やめよう。私だってそのうちの1人だ。てか大人になっても私ってこういう人間のままなのかな。駄目だなあ。
「薬早く効けー……」
ソファーに横になっていると、玄関が開いた。もう帰ってきたんだ、コンビニかな。
「やな、」
「大丈夫?」
「え、うん」
「鍵、開いてたからなんかあったかと」
「ああ……そっち、うん大丈夫なにもないよ」
「そっか。買ってきたもの合ってるか確認して。しんどかったら文化祭も休んでいいから」
ナプキンの入った黒い袋を手渡される。
わざわざここまで持ってきてくれるし、本当……。
「優しいよね。合ってるよ、ありがと助かった」
「良かった。俺仕事行かないといけないから橘はゆっくり休んで。あ、飯……卵焼きしか作ってないけど食べていいから」
料理作ってくれてたんだよね。
なんか狡い。
「ねえ先生」
「?」
ネクタイを結んでいる柳瀬の背中に話しかける。
「ありがと」
「そんなにお礼言ってもなんも出ないよ」
「けーち」