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甘蜜トラップ
第3章 感情と強制




気が付けば眠っていたようで、月曜日の朝を迎えていた。清々しいとは言い難い程に外は大雨だ。ベッドは柔らかくて寝心地に文句は一切ないんだけど、天気のせいかどんよりする。かといって晴天が好きなわけでもないんだけど。


リビングに向かうと、ぎょっとした。ソファーで眠っている柳瀬。電気がしてついてるしてっきり起きてると思ってたのに、なんだ、まだ寝てたのか。


……私昨日電気消したと思うんだけど。


歯磨きをしたり顔を洗ったりしていると、それなりに物音も立ててしまっていたようで。

洗面所にいると、柳瀬が鏡に映った。


「橘」

「あ、」

「おはよう、いま何時?」

「自分家の時計の場所くらい分かってるでしょ。私に聞くより見た方が早いと思うけど」

「って橘が長いこと言ってる間に教えてくれた方が早くないかな」

「10時だよ」

「あー、10時か。寝過ぎた」


リビングに近いの絶対柳瀬なのに。
なんで私が。腑に落ちない。
まあいいや、深い意味はなさそうだし。


「教師って早起きなんだと思ってたよ私」

「振替休日なめんなってこと」

「オツカレサマデス」

「なんでカタコトなの」

「顔洗う? ごめん邪魔して」


癖毛直しているとスペース陣取って邪魔でしかない。譲ると、「どーも」と歯ブラシを手に取った。


「……ねえ先生」

「ん?」

「いや、やっぱいいや」


昨日のことを覚えているのかどうか聞こうと思ったけど、夢現つでキスをしたなら誰かと間違えたのかもしれない。

いまいなくても彼女くらいいただろうし、それを考えると尚更、詮索するのは良くない。


「なに?」

「なんでもないよ」

「ふうん」





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