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甘蜜トラップ
第3章 感情と強制




「柳瀬にとって生徒ってなに?」

「可愛い教え子」

「どう考えても嘘でしょ」

「俺は別に生徒のために教師になったわけじゃないよ。俺だって高校生っていう多感な時期があったわけだし。めんどくさいでしょ、高校生」

「めんどくさいよ、そりゃあ……人付き合い」

「まあ人付き合いは大人になっても変わらないけどね」


それもそうだろうけど、それとこれとは違うんじゃないかって学生ながらに言いたい。お金を貰ってる立場で苦しい人付き合いをするのとお金を払って学校に行ってるのに嫌な人間関係に悩まされなければならないのは違う、って。


お金を貰ってる教師はいざ生徒に問題が起きても程度によっては知らん振り。解せない。とはいえ私が学費を払ってるわけじゃないからあまり言えたことでもないんだけど。

それでも我儘を言いたい。教師は生徒になにもしてくれないのに偉そうにする、と。多感な時期って言葉を使うなら私もそれを言い訳にしたいんだよ。


「じゃあ柳瀬はなんで教師になったの?」

「学校の空気が好きなだけ」


なにそれ私と真逆じゃん。
学校の空気なんて本当は吸ってたくもないくらい嫌いなのに。


「まあ半分嘘だけど。昔は嫌いだったしね、学校」

「そうなの? 柳瀬が?」

「そう。担任の教師が苦手で」

「誰かに憧れてとかそういうのじゃないんだ?」

「全然。寧ろ憧れがないからこそ自分の理想だけで動けるのかもしれないけど」


理想、とは。


「ねえ、理想で動いて私に接してるならそれって犯罪的な匂いしかしな、」

「俺はお前以外にそんなことしてないけど」

「…………え?」






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