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甘蜜トラップ
第3章 感情と強制




「私だけなの?」

「いろんな生徒に手出してたら怖いでしょ」

「……そもそもなんで私なの?」

「浅木と悪いことしてたから」

「他に悪いことしてる生徒がいたらその子にも同じように教えてあげるの? 先生が家に連れ込んで」

「なにそれ、なにが言いたい?」

「……ごめんいまのナシ」


嘘でもいいから私のことを好きだからって言ってくれたら、それだけでいいのに。そんなこと柳瀬は言ってくれない。

お前だけっていうくせに、それは“いま”の話であって決して“明日”の話ではない。他に誰もいないけど、そのうち誰かが追加されるんじゃないかって思うと無性に気分が落ち着かなくなる。


「柳瀬、」

「なに?」

「私にもっと教えて」

「なにを?」

「悪いこと」

「朝からなに言ってんの、駄目」


そういうことをしちゃいけないって言ってるのか、私が生理だから出来ないだろって言ってるのか、このポンコツ頭では判断出来ない。


「今日どこか出かけるの?」

「DVDでも借りてきて観ようかと思ってるだけ」

「ふうん。一緒にどっか行くとかそういうのないんだ」

「誰がいつどこにいるか分からないのに無防備に出かけられない」

「うん、それもそうだね。じゃあ私が借りてくるよ」

「お前は堂々とAVでも借りて来そうで怖いよ」

「なにそれやらしい。柳瀬こそ朝っぱらからなに考えてんの? 私の歳で借りられるわけないじゃん」

「そうだったね、まだお子様だった」

「ねえ、なんかそれむかつく……」







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