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甘蜜トラップ
第3章 感情と強制
ーー柳瀬がレンタルショップで洋画を3枚程借りてきて、これは本格的に1日DVDで潰すつもりだなと確信した。
アクションとラブストーリーとホラーというバラバラジャンルから一番に観たのはホラーだった。私はアクションが好きだから最後にとっておこうと思って。
邦画のホラーを馬鹿にするわけじゃないけど、海外のホラーはやはり日本とは違う気がする。心理的に疲れるくらい怖いものがあって、だから好き。
日本じゃ悪魔とか悪魔払いとかそういう類がまずあまり認識されていないから、海外のは新鮮に感じるのかも。……偏見だろうか。
「少し休憩しよう。次なに観たい?」
……次。
「観たいわけじゃないけど恋愛かな」
「観たくないんだ、苦手なの?」
「別に……」
「恋愛下手そうだもんね、橘」
「は? なんで、全然そんなこと」
「恋愛経験あるの?」
「……」
あるし。小学生の頃クラスの男の子に告白したことくらい。言っても、付き合ってないんじゃ大したことないねって馬鹿にされそうで黙るしかなかった。
「大人の恋愛観て学びなさい」
「意味分かんない、柳瀬だってどうせ、」
「どうせ?」
「恋愛下手そう」
「だから学ぼうとしてんじゃん、俺も」
「え?」
予想外過ぎて、柳瀬を見つめてしまった。「俺が恋愛マスターならお前なんか簡単に落としてんでしょ。手当たり次第」と言いながら、スナック菓子と飲み物を持ってきてくれる。
手当たり次第って一言余計だ。それがなければもしかして私狙われてるんじゃ、的な期待でも出来たのに、台無し。
「柳瀬は彼女何人いたことある?」
「忘れた」
「じゃあファーストチューは?」
「チュー? さあだいぶ前だよ」
「つまんなーい。初エッチは?」
「秘密」
「童貞じゃないよね?」
「童貞だったら橘が教えてくれるの?」
「……っ、教えたげてもいいけど」
「これでも俺先生なんだけどなあ」
「分かってるし! ほら、さっさと観よ」
DVDのディスクを取ろうとした手が柳瀬と重なって、妙にどきっとした。どうかしてる私。なに考えてんだろ。