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甘蜜トラップ
第3章 感情と強制
洋画のラブストーリーは濃厚だった。日本のものでも深夜帯なんかだとまあまあベッドシーンがあるものの、地上波で放送できる程度のもので、邦画のR18はなんとなくエグいものしか見たことがなく、海外のR18指定のついた映像を見たのは初めてだった。
物語の軸はダークファンタジーだった。グロテスクな表現も交えながらの濃密な性的描写は見る側の心拍数を少なからず上げてくる。
当たり前の日常に退屈していた人妻が悪魔のような男に冗談混じりに呪いをかけられた途端、なにかに取り憑かれたように露出の多い淫靡な格好をし、人妻は狂ったように数多くの男達を誘惑してセックスに溺れていくというストーリー。
『ぁ、ん……私、もうっ、ぁぁん』
『……ん、俺も』
とにかく喘ぎ声のあるシーンがひたすらに続き、それが毎度違う男なのだからよくやると見ながら思った。教育的に悪過ぎる。けど、セフレなんて存在に依存しきっているような私がフィクションの女性に説教たれるなんて何様だって話。
快楽がいかに素晴らしいかということ、その需要性。見る者に間接的な欲求を湧かせること、それはもはやAVとの違いが分からない。
見ていることが恥ずかしいなんてウブなことはないけど、柳瀬が隣で見ていると思うとなんとなく気分が高揚した。
なんでこれ借りてきたんだろう、とか、なんで私とこんなエロいの見るんだろう、とか、余計なことばっかり考えてしまう。
ちらりと柳瀬を見ると、目が合った。
「な、なに」
『ぁ、ん、ぁぁっ』
「いや、ごめん」
『ァっ、やぁっ』
『嫌? お前が誘ったくせに』
なぜ日本語吹き替えなのか。
柳瀬と話している途中に聞こえてくると少し気恥ずかしくなった。
「あ、のさ」
「お前でも恥ずかしがるんだ、こういうの見て」
「別に……」
「さっきから脚組み替えてばっかりなの気付いてるんだけど」
「っ、!」
「興奮してんの? 浅木ともこういうの見てんのかと思ってた」
「み、てないし!」
『も、だめ……ゃあっ、ぁぁ……!』
「ね、ちょっと止めて」
「嫌だって言ったら?」
駄目だ、気になるとそれ以外頭に入ってこない。柳瀬の口角の上がった唇も、少し笑ってるけど翳りのある瞳も、なんかやばい。いつもと違って見える。
「感化されやすいよね、橘」