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甘蜜トラップ
第3章 感情と強制
「ーー瑞樹」
あわよくば、私は誰を願った?
裏階段には瑞樹がいた。埃っぽい空気を入れ替えるように窓を開けて煙草を吸っている彼は「うざいの来たー」と笑う。
「お前さ」
「?」
「柳瀬どう思う」
「質問の意味が分からないんだけど」
「バーカ。前のセンセのときみたいにお前が教師に入れ込んでんなら止めてやろうと思ったんだよ俺は」
「……なるほど。勝手だね、瑞樹」
「おうよ」
自由気儘というべきか、自己中心的というべきか。或いは両方を兼ね備えているだけなのか。彼の言動は突拍子もなくて、私はいつもついていけない。
「で? 本当んとこどうなのよ」
「あんたに話す義理はないね」
「つーことは?」
「でも瑞樹が勘繰るような感情じゃないよ」
恋愛なんて結果が出るかも分からないような不確かな感情じゃない。
「それってつまり俺らと一緒ってこと?」
「……もう違うじゃん」
「俺がチクったら柳瀬の首飛ぶよな」
「瑞樹はそういうことしないよ」
「俺のこと買い被んなよ」
瑞樹は優しい。
不器用なだけで、その優しさがもっと皆に伝われば瑞樹は一人で行動しなくても済むのに。それが瑞樹にとっての幸せかは分からないけれど、彼は割と人が好きなんだと思う。
「前田さんは?」
「さあ」
「さあって」
適当だな。
「帰ったよ」
「なんで?」
「俺が怒らせた」
「……ふうん」
「興味を持てよ」