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甘蜜トラップ
第3章 感情と強制
「私はさあ」
「ん」
「瑞樹のこと好きだよ」
「そーか」
終わりになんてしたくないよ。恋愛は終わりがあるから嫌だって友達止まりがいいなんて話を漫画の中で見た気がするけれど、友達にも終わりがあるんだから現実は残酷だ。
それとも私たちの友達という関係は清い付き合いではないから、これは私への罰だろうか。意地悪だな。
「前田さんと付き合っててもいいから私と飯食おうよ」
「前田が許さねんだよ」
「……じゃあ一緒に、ってか一緒ってのが駄目なんだよね。会うなってことだよね。どうしたら分かってもらえる?」
「なにを? 誰に?」
「私が瑞樹と清い付き合いをすることを前田さんに」
いままでのことを知られている以上、なかったことになんて都合の良いことは出来ない。それでもこれからは違うんだってことを証明するにはどうすればいい。
「清い付き合いってなんだよ」
「セックスしない関係じゃない?」
「やーだね」
「は?」
「つまんねえよ、そんなん」
瑞樹?
裏階段の3階、踊り場。私を窓際に追いやって壁に手をついた瑞樹はニヒルに笑ってキスをした。
「ーーなんで」
「なんで清く付き合わなきゃなんねえ?」
「だって、」
それじゃあ私は柳瀬をーー
「いまなに考えた?」
「っ」
裏切ってしまうのではないか、と。
そんなふうに考えている自分がいて、それを見透かすような瑞樹の熱を帯びた瞳が怖かった。
「お前の都合なんて俺は知らねえ」
「なんで? いいの? 瑞樹が先に私を突き放し、……っん、瑞樹、」
遮るように口付けをして。
なにかを奪い取るように、執拗だった。
「俺がお前としたいんだけど。真面目な付き合いとかクソ食らえだよ。前田がいたって俺はお前じゃなきゃダメだし。つーか、前田だって俺のことそういう風に好きなわけじゃねえんだよ」
突き放したくせに。簡単に前田さんのところに行ってしまった善人気取りのくせに。私が手を伸ばしたら振り払うくせに、私が背を向けたらなんで呼び止めるの。
ーーそれなのに引っ張られてしまう私は、滑稽な女だ。