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痴漢脳小説2 ~ガールズバンドに男子の僕が入っちゃいました~
第7章 過去から来た少女
「…思い出した?」
「…はい」

 僕はもうカエさんの顔を見ることが出来なかった。どんな顔をしたらいいのかも分からないし、何を言えばいいのかも分からない。下を向いてただカエさんの言葉に頷くしか、それしか出来なかった。

「まさかこんな形で再会するなんて思ってもみなかったけど。私はすぐに気が付いたよ」
「…」
「私に痴漢していた男の子だって」
「…はい」
「でもね」

 不意にカエさんの口調が和らぐ。僕はつられて顔を上げる。カエさんは優しく微笑んでいた。

「その痴漢君は一生懸命だった。慣れない仕事を押し付けられて我儘な女の子の中に放り込まれて。それでも一生懸命だった」

 カエさんは手に持ったままの紙をふわりと束の上に戻す。

「時には、やっぱりこの子痴漢なんだなってアイディアもあったけどね」
「…すいません」
「…いいのよ」

 すすっと膝を滑らせたカエさんと僕の距離が縮まる。

「太一君が本当に一生懸命なのは伝わったから。それにあの痴漢の日々があって私は自分の性癖に気付くことが出来た。だから今、コンパニオンの仕事を選んだし、バンドの時もステージの上で誰よりも気持ちよくなれている」
「…はい」
「きっとこの曲を演奏する時、私はすっごく気持ちがよくなると思う。だって自分のエッチな時の声なんだものね。きっと誰もそれが私の声だなんて気が付かない。それでも私は最高に気持ちがよくなれる」

 膝の上に置かれた僕の手にカエさんの指先が触れた。

「だから太一君にはお仕置きとご褒美。私に痴漢をしてたお仕置きと一生懸命頑張ってくれたご褒美」
「お、お仕置き…?」
「そう。今日は私の言うことを聞くのよ」

 心なしか悪戯っ子のような表情のカエさん。

「いい?」
「…はい」
 
 僕の返事に満足そうに頷く。
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