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痴漢脳小説2 ~ガールズバンドに男子の僕が入っちゃいました~
第8章 いざ大舞台へ!
 ステージの上では浅山知代が小さな体を目一杯に使って彼女の音を響かせている。

 僕は一階席の一番後ろのボックス席からそれを眺めている。

「リハーサルを観に行くわよ」

 そのシーカさんの言葉に付き合ってうちの会社用にとってくれた関係者席へと座る。
 ボックス席は通路よりも一段高くなっていて腰の高さの仕切りがある。その中にテーブルと、それを囲むように低い背もたれのある椅子が四つ並んでいる。
 
 会場後には社長と社員がやって来てこの席に座るはずだ。

 リハーサルは軽く流す程度かと思ったけど浅山知代の性格なのか、かなり念入りに進められている。

 こういうところが売れる要素なのだろうか。僕は興味深くそれを眺めていた。

「あたし…緊張して来た」

 シーカさんがぽつり、とつぶやいた。

「シーカさん?」
「さっきから体は硬いし、なのに膝は震えるし。だから浅山知代のリハを観て気合を入れようと思ったんだけどダメみたい…」

 浅山知代の歌声とバンドの音が響く中、シーカさんの声は小さくか細い。

 無理もない。五千人という『パンツァーカイル』がいまだ体験したことのない大人数の前で歌わなければならない。それに後に出てくるのは人気急上昇中で、しかもシーカさんともそれほど歳の変わらない浅山知代だ。

 プレッシャーを感じていてもおかしくはない。

 それにシーカさんはもう一人分の気持ちも背負っている。亡くなったお姉さんのオーカさんの分。そしてアカネさんが言っていたように疎遠になってしまった旧メンバーの願いもまた、きっと彼女の肩に乗せられている。

「…太一、助けて」
「シーカさん…?」
「あたし…失敗したくない。絶対に成功させたい。CDも千枚売ってバンドを続けたい」
「…はい」
「でも…ドキドキして心臓が張り裂けちゃいそうで…」

 高鳴る鼓動を抑えるように両手を胸に当てる。いつも強気なシーカさんが今は何だか小さなか弱い女の子に見える。

「…また私の裸を見てよ」
「はい?」

 バンドの音に紛れてさらっと何かとんでもないことを言われたような気がした。

 また、裸を…?

 裸を!?
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