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痴漢脳小説2 ~ガールズバンドに男子の僕が入っちゃいました~
第1章 『パンツァーカイル』
「ちょっと、どういうことよ!?」
「は、はい?」

 突然ガバっと跳ね起きたシーカさんに詰め寄られて僕は「情けない声の見本、第二弾」を発した。ライブ終わりの湯気が立つほどの高い体温がむわっと僕の目の前に広がり汗で湿った空気が鼻をくすぐる。

 決して嫌な匂いではない。不快な、あるいは不潔な匂いでもない。
 健康女子の彼あだから生まれた、男の性欲にじんわりと浸透するような、そんな匂い。

 目の前に威圧感たっぷりに立ち塞がれて僕本人はこんなに縮こまっているのに、素直うなムスコ君がちょっと元気になる。こら、いい子だからおねんねしてなさい。

「何で、三枚しか、売れてないの!?」

 一言一言区切るように言うシーカさん。

「何で、言われても…」
「あんたしっかり声出して客寄せしたの?」
「しましたよぉ…」

 ライブの後の物販は僕の担当だ。メンバーそれぞれに顔馴染みのお客さんと話し込んでいて、時折寄って来ては少し手伝ってくれる程度だ。
 だから内気で目立たなくてまだ角も苦手なこの僕が声を出してお客さんを呼び込まなけれんばいけない。
 企画が始まった四月。祝日の多いご活がCDは楽に売れた。呼び込みなんかしなくてもお客さんのほうから寄って来てくれた。

 でも今日。というかこの一カ月ほど。 
 どんなに頑張ってもCDは売れなくなった。

「あんたの声が小さいんじゃないの?」
「そ、そんな…」
「男のあんたが女のあたしより大きな声が出なくてどうするのよ」
「だってシーカさんヴォーカル…」
「何!?」
「何でもありません…」

 さすがヴォーカルと唸らせるほどの肺活量でシーカさんは一気に僕を土俵際まで追い詰めた。

 もう泣こうか、泣いちゃおうか。

 そう思っていると穏やかにふわっとした声が助けてくれた。

「まあシーカちゃんも落ち着いて。太一君も頑張ってくれてたわよ」

 声の主はカエさん。困ったように笑いながらもシーカさんをなだめてくれた。
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