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痴漢脳小説2 ~ガールズバンドに男子の僕が入っちゃいました~
第1章 『パンツァーカイル』
「…なるほどね」

 頬杖をついて嘆息しながらカエさんが頷く。

「特に今回はCDを売るという目的があるわけで、だからCDに入っている曲を歌わなければいけないわけで…
 そうするとライブの構成が似てきてしまって常連さんにも飽きられてしまうかもしれなくて、ですね…だから余計に新規のお客さんを…」

 再び押し黙ってしまったメンバーの間で沈黙のプレッシャーに耐えかねた僕がもごもごと口を動かす。

「一理ある」
 そんな僕に静かに同意してくれたのはイズミさん。

「構成が似てしまうからこそ、常連に誘導しれもらえれば新しい人も入りやすいかもしれない」

 普段の口数が少ない分、イズミさんの発言には重みがあるようで現に今もイズミさんの言葉によって僕に向かっていたシーカさんの八つ当たりのような気配が収束していくのが
はっきりと感じられた。

「…確かにあたし達、新しいお客さんの開拓にはあんまり目が向いていなかったかもね」
「そうですね…目の前のライブを盛り上げることしか考えななかったですね」
「これからはそれだけじゃダメってことね」

 イズミさんの言葉を受けて他の三人がそれぞれに思いを述べる。

 良かった、伝わった。イズミさんの助太刀があったとはいえどうやら僕の言いたいことはちゃんと理解してもらえたらしい。

 イズさんはと目を向けてみればいつも通りのクールな仕草でペットボトルのお茶を口に運んでいる。面長で色白な顔、切れ長の瞳。汗で張り付いた前髪がライブの後でも体の奥に燻る熱気を僕に伝えてくれる。

「って言っても新規もお客さんの開拓ってどぷすればいいんだろ?」

 シーカさんが首を傾げ、傾いた視線の先にいた僕と目が合った。大きな黒目がしっかりと僕を見据えている。

「ちょっと、そうよ、あんた」
「ご、ごめんなさい」
「何謝ってるのよ、いいから聞きなさいって」

 反射的に謝ってしまう僕に再びずずい、と詰め寄るシーカさん。

「あんたも男でしょ。あんたが考えればいいのよ」
「な、何を…?」
「だから、もう、よく聞きなさいよ」

 迫力に負けて壊れたおもちゃのように首をこくこく縦に振る僕。
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