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痴漢脳小説2 ~ガールズバンドに男子の僕が入っちゃいました~
第2章 暖かい口に包まれて
赤信号。僕は彼女達を起こさないように気を付けて静かにブレーキを踏む。
「私は」
静かになった車内に静かなイズミさんの声。いつも通り抑揚の少ない落ち着いていて不愛想な声。
「感情を出すのが下手だし言葉も足りない。だから君に余計な気を使わせてしまっている」
「…」
「でも私は君に感謝している。いつも黙々と仕事をこなしてくれて、今日もこんな遅い時間まで付き合ってくれて」
「…仕事ですから」
こういう時にうまい言葉を考え付いたためしのない僕の頭は相手の好意を受け付けないような言葉を口から吐かせる。黙々と仕事をしているのは口下手だからだ。
「…それでも私は感謝しているよ」
イズミさんの言葉は優しい。僕の言葉の選択が悪いのもきっと理解している。
信号が変わる。警戒を促す赤い光は消え穏やかな青い光が灯る。僕はアクセルを踏む。
「…僕達は似ていますね」
「そうね…どっちも口下手」
「はい」
僕は薄く笑う。イズミさんからも暖かな気配が伝わってくる。
「これからもよろしくね…太一君は私のことが苦手だろうけど」
「…正直に言えば苦手でした。つい今の瞬間までは」
「…?」
「イズミさんの言葉を聞けて苦手な気持ちは少し消えました」
「うん」
再び車内に満ちる沈黙。でもさっきまでの気まずい沈黙とは違って、それは少し気持ちがいい時間だった。
イズミさんが肩越しに後ろの三人を見つめる。みんなよく眠っている。
「私は、このバンドをなくしたくない」
前に向き直り街灯に顔を照らされてイズミさんは言う。
「理由はまだ言えない。でも私はこのバンドをなくしたくない。続けていきたい。だから」
すっ、と息を吸う音。
「これからも力を貸して下さい。お願いします」
イズミさんは次のチョコを僕の口に放り込んだ。
…照れ隠し、かな? だったら可愛いな。
「私は」
静かになった車内に静かなイズミさんの声。いつも通り抑揚の少ない落ち着いていて不愛想な声。
「感情を出すのが下手だし言葉も足りない。だから君に余計な気を使わせてしまっている」
「…」
「でも私は君に感謝している。いつも黙々と仕事をこなしてくれて、今日もこんな遅い時間まで付き合ってくれて」
「…仕事ですから」
こういう時にうまい言葉を考え付いたためしのない僕の頭は相手の好意を受け付けないような言葉を口から吐かせる。黙々と仕事をしているのは口下手だからだ。
「…それでも私は感謝しているよ」
イズミさんの言葉は優しい。僕の言葉の選択が悪いのもきっと理解している。
信号が変わる。警戒を促す赤い光は消え穏やかな青い光が灯る。僕はアクセルを踏む。
「…僕達は似ていますね」
「そうね…どっちも口下手」
「はい」
僕は薄く笑う。イズミさんからも暖かな気配が伝わってくる。
「これからもよろしくね…太一君は私のことが苦手だろうけど」
「…正直に言えば苦手でした。つい今の瞬間までは」
「…?」
「イズミさんの言葉を聞けて苦手な気持ちは少し消えました」
「うん」
再び車内に満ちる沈黙。でもさっきまでの気まずい沈黙とは違って、それは少し気持ちがいい時間だった。
イズミさんが肩越しに後ろの三人を見つめる。みんなよく眠っている。
「私は、このバンドをなくしたくない」
前に向き直り街灯に顔を照らされてイズミさんは言う。
「理由はまだ言えない。でも私はこのバンドをなくしたくない。続けていきたい。だから」
すっ、と息を吸う音。
「これからも力を貸して下さい。お願いします」
イズミさんは次のチョコを僕の口に放り込んだ。
…照れ隠し、かな? だったら可愛いな。