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痴漢脳小説2 ~ガールズバンドに男子の僕が入っちゃいました~
第2章 暖かい口に包まれて
車が渋谷の芸能事務所『パーティー』の入っている雑居ビルの地下駐車場に止まった時、イズミさんは何気なく言った。
「え…え、でも…」
「本番はナシのお店だから」
「え、あの…はい…はい?」
イズミさんは軽い動作で車から降り、シンセサイザーのケースを取り出す。
『パンツァーカイル』はイズミさんがドラムとキーボードを兼任している。今日のようにストリートライブをする時は、パソコンで打ち込んだドラムの演奏をシンセサイザーに覚えさせて自動演奏で対応している。大きなドラムセットはストリートには不向きだ。持ち運びだけでも大変だから。
だからイズミさんの使っているシンセサイザーはそれなりに高価なものだ。
僕は実は少しキーボードが出来る。とは言っても安いキーボードしか持っていない。それと比べてイズミさんのシンセはとても多機能でとてもいい音がする。
いつか触ってみたい。
イズミさんにじゃないよ。シンセにだよ。
…まあ、イズミさんにも触ってみたいけど。
僕は『痴漢脳』を誇るものとしては恥ずかしくも、いまだに『パンツァーカイル』のメンバーに、本当の本気で指一本触れていない。痴漢としてはすれ違う時に軽いタッチくらいはしてみたいものだが、まだ実行出来ていない。
今はまだ大人しくしていて信頼を得るべき時期。
そう思っている。信頼されればいろんなことがやりやすくなる。
と思っていた矢先の、イズミさんの思いもよらぬ告白。
僕があれこれと考えているうちに、イズミさんはシンセのケースを重そうに持って駐車場の出口に向かおうとしていた。
「あ、送ります」
「大丈夫」
「いえ、もう夜も遅いしシンセも重いだろうし」
細いイズミさんの腕からシンセのケースを受け取る。確かに重いは重いが僕の手にはそれほどでもない。
「…ありがとう」
イズミさんはぽつりと言うと僕の後ろを歩く。地下駐車場に反響する二人の足音。
「やっぱり男の子だね。頼りになる」
「そんなことないですよ」
薄暗い駐車場。静かな中に僕とイズミさんの足音が響く。『パーティー』が借りている駐車スペースはいちばん奥。壁に天井に歩く音が反射する。
「え…え、でも…」
「本番はナシのお店だから」
「え、あの…はい…はい?」
イズミさんは軽い動作で車から降り、シンセサイザーのケースを取り出す。
『パンツァーカイル』はイズミさんがドラムとキーボードを兼任している。今日のようにストリートライブをする時は、パソコンで打ち込んだドラムの演奏をシンセサイザーに覚えさせて自動演奏で対応している。大きなドラムセットはストリートには不向きだ。持ち運びだけでも大変だから。
だからイズミさんの使っているシンセサイザーはそれなりに高価なものだ。
僕は実は少しキーボードが出来る。とは言っても安いキーボードしか持っていない。それと比べてイズミさんのシンセはとても多機能でとてもいい音がする。
いつか触ってみたい。
イズミさんにじゃないよ。シンセにだよ。
…まあ、イズミさんにも触ってみたいけど。
僕は『痴漢脳』を誇るものとしては恥ずかしくも、いまだに『パンツァーカイル』のメンバーに、本当の本気で指一本触れていない。痴漢としてはすれ違う時に軽いタッチくらいはしてみたいものだが、まだ実行出来ていない。
今はまだ大人しくしていて信頼を得るべき時期。
そう思っている。信頼されればいろんなことがやりやすくなる。
と思っていた矢先の、イズミさんの思いもよらぬ告白。
僕があれこれと考えているうちに、イズミさんはシンセのケースを重そうに持って駐車場の出口に向かおうとしていた。
「あ、送ります」
「大丈夫」
「いえ、もう夜も遅いしシンセも重いだろうし」
細いイズミさんの腕からシンセのケースを受け取る。確かに重いは重いが僕の手にはそれほどでもない。
「…ありがとう」
イズミさんはぽつりと言うと僕の後ろを歩く。地下駐車場に反響する二人の足音。
「やっぱり男の子だね。頼りになる」
「そんなことないですよ」
薄暗い駐車場。静かな中に僕とイズミさんの足音が響く。『パーティー』が借りている駐車スペースはいちばん奥。壁に天井に歩く音が反射する。