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蝶が舞う時
第16章 進むべき道
気がつくと俺はベッドに寝ていた。

見回すと菜摘は涙を流しながら、俺の手を握っていた。

「あ、おじさん、気がついた…良かった…」

「菜摘…なんで泣いている…ここは何処かな…」

「ここは病院…おじさんが死んじゃうと思って…」

菜摘は泣き止まない。

カーテンが開き、看護師がやってきた。

「東条さん、気がつかれました? 気分はどう?」

「はい、大丈夫ですよ。」

「この子には大丈夫よ。って言ってたんだけど…おじさんを助けてって泣くのよ。」

「東条さんよりこの子が大変だったわ…」

看護師は微笑みながら俺の血圧を図る。

「点滴で血圧が上がってきたわ。じゃ、先生を呼びますね。」

看護師はカーテンを閉めて出ていった。

「おじさん、大丈夫?」

「ああ、大丈夫だよ。それよりおじさんはどうなったの?」

「おじさんが突然菜摘の膝に倒れ込んで、呼び掛けても反応しなくて…それでお店に駆け込んで助けを求めたら、救急車が来てここに運ばれたの…」

「そうなんだ…」

突然カーテンが開き、初老の医師が入ってきた。

「気分はどうですか?」

「はい、今はもう何ともないです。」

「一応血液検査をしましたが異常は認められませんでした。」

「また、外観や反射も異常はないので、CTは撮影してません。」

「恐らく一時的な血圧低下を引き起こしたと思われます。」

「何か処方されている薬が有りますか?」

「はい、 菜摘、鞄を取って。」

菜摘から鞄を受け取り、中から薬を取り出す。

「実はたまにこれを服用しています。」

医師は薬を受け取り、錠剤に記された名前を確認した。

「なるほど、分かりました。これが原因のようです。」

「この薬はバイアグラと同じ効能がありますが、成分的には軽い物です。」

「ただ、効果持続時間が長いため、疲労時は逆に血圧低下を引き起こすこともあります。」

「たぶん、今回はその状態であったと思われますよ。」

「服用には注意してください。」

「今、点滴をしてますから、終わりましたら帰っても良いです。」

「少し、加減をしてください。」

医師はニヤっとしながら出ていった。


点滴が終了してタクシーでホテルに帰ると、俺の車と買い物はホテルが取りに行ってくれたらしい。

フロントでお礼を言ってから部屋へ戻った。


大変な日だった…
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