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蝶が舞う時
第18章 苦悩
「但し…数学と英語の上積みが更に必要です。あと20点位…」

「あと20点位…」

菜摘は不安げに先生を見つめている。

「そこで提案なんですが、後期からここに入学しませんか?」

「後期から入学?」

「はい、当校は一人でも多く医学部の合格者を出したい中で、中村さんは期待出来ます。」

「後期の授業は個人単位で不得意な科目を重点的に指導致します。」

「また、中村さんは現在B判定なので入学金は免除しますから…後期の授業料だけで約25万円程になります。」

俺は考えた。

25万円で菜摘が合格出来ればそれでいい…

「菜摘…どうする?」

菜摘は俺を見つめる。

「入ってもいいけど…お金…は…」

「わかった。」

俺は二人の先生に向き合い、

「それでは、入学させましょう。」

「わかりました。それでは帰る時に入学手続きをお願いします。」

俺と菜摘は面談が終わると廊下に出た。

「おじさん、いいの? 菜摘は家でも勉強できるから…」

「菜摘が合格出来ればそれでいい…」

「おじさん、ごめんね。」

「謝ることはない。おじさんと菜摘は夫婦になるからな!」

突然菜摘が抱きついてきた。

「菜摘…ここじゃダメだ。家に帰ってからな…」

「おじさん、また厭らしいこと考えてるの?」

俺はニヤニヤしていたら

「もう変態おじさんね…」

俺と菜摘は階段を下りて、事務室で入学手続きを済ませて帰った。


後期の授業は9月から始まる。

明日から約一週間程、菜摘は自宅で学習を続ける。

菜摘は夕方の買い物と食事以外は、相変わらず机に座って問題集を解いていた。

学習を終えると菜摘と一緒に風呂に入る。

バスタブの中でしばらく菜摘を抱き留めると、菜摘の寝息が聞こえてくる。

( よく頑張ってるなぁ…えらいぞ、菜摘…)

菜摘を起こし、風呂から出るとそのまま寝室へと直行する。


ある日の明け方、菜摘はうなされて大声をあげた。

「おじさん、行かないで、一人にしないで…」

「菜摘、菜摘、おじさんはここにいる。」

菜摘はふと目を覚まして

「良かった…おじさんがいる。」

菜摘は俺にしがみつく。

「どうした? うなされていたよ。」

「おじさんが…居なくなった…」

「大丈夫だ、おじさんは菜摘と一緒にいるから…」

菜摘は再び目を閉じて眠りについた。



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