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蝶が舞う時
第18章 苦悩
厳しい残暑も終息し、9月から始まった後期授業も瞬く間に3か月が経過した。

最終的な進路を決める面談が実施される12月に入った。

第3回の公開模試が10日に実施され、その翌日に俺は菜摘の通う予備校に向かった。

菜摘と面談室に入ると前回と同じ顔ぶれの二人が、机を挟んで並んで座っていた。

俺は二人の先生に向かい頭を下げた。

「よろしくお願いします。」

二人ともそれに習って頭を下げる。

「さて、中村菜摘さんの模擬試験の結果ですが…」

俺と菜摘は先生の内容に注目する。

「第2回に比べると、中村さんの対策課題であった数学と英語の上積みが、それぞれ20点と15点かさ上げされてます。また、化学と生物、特に化学においてはかなり得点の上昇がありました。但し、国語と社会については余り変化は見られない。」

「全国集計はのちほどになりますが、ほぼA判定、つまり100~75%の範疇にあると思われます。」

俺は予想していたとは言え、正直、菜摘の能力には驚いた。

「A判定…」

菜摘を窺うと、菜摘はとりあえずほっとした表情をしている。

「とりあえず、1月のセンター試験で85%以上の得点を確保し、大学の二次試験を有利に進めることに徹して下さい。大丈夫、中村さんは期待が持てます。」

俺と菜摘は車に乗り込み、予備校を後にした。

「菜摘…凄いじゃないか…A判定とは。」

「おじさん、まだ気を抜けないよ。」

「そうだな、まだ合格したわけではないな。」

「とりあえず、現状をセンター試験まではキープしないと…」

菜摘は口には出さないが自信が有るように感じる。


「ところで菜摘、誕生日は何時だったかな?」

「おじさん、忘れたの? 酷いなぁ。4月30日よ!」

「4月30日か…」

「どうしたの?」

「菜摘…大学に合格したら4月30日に結婚しよう。」

「え…本当に?」

「ああ、本当だ。」

菜摘は突然俺に抱きついた。

「おいおい…車が…」

運転する車が、一瞬左右にふらついた。

「おじさん、最高に嬉しい…誕生日が結婚記念日…」

「菜摘…まだ大学に合格していない。」

「そうね、まず合格が先ね。」

「ああ…菜摘、もう少しだ。頑張れよ!」

「うん…」

菜摘は俺の左腕に自分の腕を組み、車窓から遠くを見つめていた…







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