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蝶が舞う時
第14章 別れ
美咲を見送った後、すすり泣く菜摘をマンションに連れて帰る。

菜摘は帰り着くと、そのまま寝室に向かいベッドにうずくまった。

キッチンやリビングに美咲の残した痕跡が…

流石に俺も堪えた。

俺は調子に乗っていたかも知れない。

結局、美咲と菜摘に悲しい思いをさせてしまった。

菜摘はベッドにうずくまり、眠っているようにも思えた。

菜摘の側で俺もベッドに横たわると、菜摘がしがみついてきた。

俺は優しく抱き寄せた。

「おじさん、菜摘を独りにしないでね…」

「ああ…おじさんは菜摘と何時も一緒だ。」

俺は菜摘を抱き寄せたまま、これから先の事を考えていた。

菜摘の今後の将来については、少なからず俺には責任がある。

できれば、将来菜摘が俺と別れた後、独りでも生きていけるようにしたい。


考えている内に俺は眠ってしまった。


顔を触られたような感覚で目が覚めた。

抱き寄せている菜摘が俺を見つめている。

「おじさん、眠っていたね…」

「ああ…そうみたいだ。」

俺は菜摘の唇にキスをした。

「また、菜摘と二人だけに戻ったなぁ…」

「おじさん、美咲ちゃんが居なくなって寂しい?」

「寂しくないと言えば嘘になるが、もう菜摘と二人だけでいい。」

「おじさん、菜摘を一生愛してくれる?」

「ああ…菜摘を一生愛する…」

「おじさん、それじゃ菜摘と結婚して。」

俺は返答に困った。

「菜摘はおじさんと結婚して、おじさんとの子供が欲しい。」

「菜摘、以前話したと思うが、おじさんはもう若い女性と結婚する様な年齢ではない。」

「それに、前回離婚してからは、もう独りで生きていくことを決めた。」

「菜摘には将来がある。可愛くて、優しく、料理も上手い。菜摘を愛する人が必ず現れる。」

「だから…

俺が更にしゃべろうとすると、菜摘は指で俺の口を塞ぐ。

「おじさん、菜摘の将来はおじさんと結婚すること。このことはおじさんと出会った時に既に決めたの。だから、菜摘の考えは変わらない。」

「おじさんと出会ってから菜摘の将来は決まったの。」

俺は菜摘を説得も出来ず、自身も決心出来なかった。

「菜摘、お前が20歳になった時にこの話をしよう。」

「菜摘が20歳になったら、両親が同意されなくても菜摘の判断で、おじさんと結婚できる。」


俺はこの件を先延ばしした。

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