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蝶が舞う時
第15章 提示
ある日の午後、俺と菜摘は駅ビルのファッション街を歩き廻っていた。

菜摘の着る春先から初夏にかけての服を買ってやりたかった。

最も菜摘本人は遠慮していたが…

菜摘が服を選んでいる間、俺は主通路で行き交う人達を眺めていた。

そんな中、あるカップルが2軒先の旅行代理店に入って行く。

俺は旅行代理店がガラスの壁面に掲げた旅行先の風景ポスターを眺めていた。

( 何処か菜摘と行こう! )

( 国内か海外か… )

菜摘は恐らくパスポートを持っていないから、申請手続きに時間がかかる。それに20歳未満なので、親権者の同意も揃えなければならず煩雑だ。

( 国内にしょう… )

( さて、何処にするか… )

菜摘が大きなショップの袋を持ってやって来た。

「おじさん、ここにいたの? 菜摘は探したんだよ!」

「ああ…ごめん、ごめん、菜摘がゆっくり服を選べると思って…」

「おじさんと一緒に探したかったのに…」

菜摘は少し膨れっ面する。

「おじさんはセンスないから…菜摘が探した方がいいよ。」

「それより菜摘、何処か行こう!」

「何処かって?」

「何処かだ。旅行に行く。」

「ええ、本当? 初めてだね。おじさんと旅行なんて。」

「何処か行きたい所は有るか?」

「ううん…おじさんの行きたい所でいい。」

「じぁ、山沿いの高原で露天風呂付きのコテージ風ホテルはどうだ? ピクニックや乗馬もできる。」

「いいわね。おじさん行ったことあるの?」

「ああ、大分前に一回行ったことがある。」

「うれしいな! 何時行くの?」

「予約を入れて、部屋が取れれば明日行こう!」

「ええ、明日? おじさん何時も急なんだから…」

俺と菜摘はマンションに帰ると、ホテルに予約を入れた。

「菜摘、ホテルが取れた。明日から一週間だ。この街から高速で約5時間のドライブになるが…」

「一週間ね。菜摘うれしいなぁ… なんかおじさんと新婚旅行みたい!」

「はい?」

「ふふ…冗談よ!おじさん。」

菜摘はニヤニヤして俺を見つめていた。

俺はベランダに向かい煙草に火を着けた。

( 今回の旅行で菜摘の将来を話し合わなければならない。)

菜摘は楽しそうに旅行の準備をしていた。
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