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蝶が舞う時
第15章 提示
ウェイトレスがグラスワインを持ってきた。

俺はグラスを持って菜摘を見つめる。

「じゃ、奥さん、これからも宜しく…」

菜摘もグラスを掲げて

「貴方、これからもお願いします。」

グラスの縁を合わせてから口元に運ぶ。

「うーん、旨い。少し甘めだけどよく冷えて美味しい…」

「ほんとこんな飲みやすいワインてあったのね。」

続いてスープとグリーンサラダが運ばれてきた。

「おじさん、スープも美味しいよ。」

「野菜の旨味が濃縮されたスープだなぁ…」

ウェイトレスがやって来て

「メインの地元黒毛和牛のステーキをお持ちしますが、ライスにしますか?パンにしますか?」

「貴方、私はパンを…」

「それじゃ、パンとライスをそれぞれ一つ。」

「畏まりました。」


「おじさん、ワインお代わり貰っていい?」

「いいけど…大丈夫か? 」

「大丈夫よ。もし酔ったらおじさんが介抱してくれるから…」

「はい、はい…」

菜摘の瞳は笑っていた。

俺はウェイトレスを呼び、グラスワインを追加した。

「おじさんと一生過ごしたい…」

「何か言った?」

「ううん、別に…」

ステーキが音を立てて運ばれてきた。

「ソースはこちら三種類からお選び下さい。」

ナイフがすっと入り、柔らかそうな感じがした。

「おじさん、美味しい!しかも柔らかいよ…」

「そうか! さっそく…」

俺は一口サイズのステーキを口に入れた。

口の中で肉汁が拡がり、とろけるような食感。

「菜摘、これは旨いなぁ…最高だ!」

菜摘は一口サイズにちぎったパンと交互に食べている。

「菜摘、いっぱい食べろよ。なんなら肉を追加してもいいぞ。」

菜摘はクスッと笑いながら

「おじさん、そんなに食べれないよ。あの時と同じね。」

「あの時って?」

「ほら、おじさんと菜摘が初めて会った時、ファミレスでおじさんは自分の分まで菜摘に勧めた時のこと。」

「そうだったかな?」

「おじさんは既にお昼食べていて、菜摘がお金が無く何も食べてなかった。」

「あの時のランチは本当に美味しかった。おじさんの優しさがこもったランチ。」

「今でも忘れない、あの時の事…」


食べ終わるとアイスのデザートが出て、夕食が終わった時は9時に近かった。

俺と菜摘は腕を組んでレストランを後にした。


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