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《愛撫の先に…②》
第1章 あたし磨き

――
とある日、
アサヒコーポレーションの資料室を出ようとしてドアを開けると陽子がこちらに向かって歩いてくる。

『早いわね〜、
だけどつき合ってよ』
陽子は菜々美の肩に手をあてて回れ右っっとばかりに室内へ促す。

『ファイルもかさ張ると重いね』
ファイル資料に手を伸ばす彼女を椅子に座り眺める菜々美。

『ん…
デスクでも場所とるしコピーとって持ち運びすれば楽出来るのに、
出来上がった企画書以外はファイルといえどコピー厳禁だし』
陽子は3冊目をテーブルに置きため息。

『ファイルは作成に必要なだけだから資料室まで足を使って移動しろ、課長の口癖ね』
菜々美は苦笑する。

『そのおかげか息抜きに話も出来るんだけど、
菜々美最近睡眠不足じゃないみたいね』
『あの朝以来あたし結城さんに起こされてて…』

『菜々美を朝ご飯だと起こすのもいいと言われた次の朝から続いてんの?
結城さんって溺愛系なの?
遥斗ギリギリまで寝てるからあたしが起こしてご飯ご飯だと急かしてるから羨ましいわ』
陽子も椅子に座り苦笑する。

『澤井くんも朝弱いんだ?』
『食べたら慌てて支度する頃には目が覚めてる、
そんな遥斗とあたしだから結城さんに起こされる菜々美が羨ましい』

『あの朝5時に起きたんだけど手を掴まれてそのまま結城さんの腕の中へ…あの、えっと…』
菜々美は赤くなりうつ向く。

『一緒に作ったっていうわけよね』
『その次の朝からは起こされるままに朝ご飯を…』
菜々美は声が小さくなる。

あたしってダメなのかな?

そんな思考を読むように陽子に肩を抱かれて。
『それが結城さんのやり方でしょ?』

『なんでそんなに朝ご飯から家庭的なの?って聞いた事があって、
結城さんは――』

『結城さんは?』
『ああいった家庭環境だったから自立しかないんだと…あたし胸が苦しくて…1人より今は菜々美がいるからと――』
『菜々美?』
『朝が弱い君は君のままでいいと…』


結城さん…
あなたの過去の寂しい家庭環境を思うとあたしは泣いてしまいそう…
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