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第1章 あたし磨き

『つまらない意識？
頑張ろうとしているのに？』

『雑誌のコメントを気にしないよう言ったはずなのに君は』

雑誌とは〈妻・彼女に望む〉男性からの恋愛以外の項目である。
「君は何故か疲れている」
と結城が言っていたように菜々美は仕事から帰った後夕食を作る前に家事をしているからだ。

菜々美だけなら２日に１度の洗濯と週に２度の掃除。
食事すら朝はパンやヨーグルト等の寝起きでもすぐに食べられるものを、
夕食は陽子と済ませたり１人ならコンビニで買って帰り時々しか作らない程度だった。

時々陽子がいる週末に２人で作るが菜々美は陽子の手際の良さを羨ましく思っていた。
「遥斗に食べさせたいって思うからやってると手際もよくなるわ」
そんな言葉を菜々美は結城の為に実感するのだ。

唯一同棲してると知っている陽子は彼女をマンション近く最寄りのスーパーまで送り、
帰宅が早まる為の家事なのだ。

時々残業もし結城の帰宅時に見られてもいた。
『君が掃除機のコードに足を引っかけ転びそうになるのを支える事になっても構わないよ』

思い出したように彼はおかしそうにくっくっと笑い肩が微かに揺れる。

『また笑うの？』
『玄関に立つ俺がタイミングよく手を差しのべ…間に合って良かった』

きれいな部屋で結城さんを迎えたいと思うからあたしは…

『二重の目をよりまん丸くし俺を見て支えられた後は、
いたたまれないのか目を閉じて赤い顔で唇を噛みしめる君は見ていて飽きないよ』
また、ひとしきり笑った結城は顔をあげる。

『拗ねたように頬を膨らませてるとまるでいつかのリスみたいに――
拗ねないでくれないかな？君が堪らなくかわいい顔をするから飽きなくて癒しをありがとう。
疲れた体も君を見ると忘れそうに抱きたくなる』

抱きたくなるって――…
あぁ堪らない…

『働きながら家事も完璧を望む雑誌コメントは両立を経験してない男のたわ言でしかない。
そんなコメントをいちいち気にしないでほしいね。
君は君でありのままでいなさい』

ありのままのあたし？