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第3章 初詣
子供の頃は家族でおせちとお雑煮を食べた記憶はうっすらあるけど。
おせち料理って子供が食べて美味しいと思うものが少ない。黒豆と栗きんとんは甘くて好きだったけど、おかずかと言われるとなんか違うし。
お雑煮はそれだけで食べられちゃうからおかず要らないし。
とにかく美味しいと思って食べた記憶がないまま、その風景は家から消えた。

親父と2人になってからはもちろんそんなのしないし。
学生時代はとにかく家に居たくなくて、友達と遊びまわってた。
働き出してからも特に何かしたって記憶がない。
だから、家族揃った温かい食卓に自分も混じってる、というのが、すごくくすぐったくて、違和感があるんだけど。

美佳ちゃんのお母さんは優しくて面白い人だし、お父さんはひたすら穏やかで。
いい家族だな、って思った。
何で実家に帰らないんだって聞かれたら、「父子家庭だったのが最近父が再婚したので、なんとなく邪魔しないでおこうと思って」ぐらいに濁そう、と思ってたんだけど、お母さんもお父さんも何も聞いてこなかった。

大人になって食べたおせちは、意外と美味しく感じたし、お雑煮も美味しかった。
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