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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第2章 神隠しの行く末
 そんな馬鹿げたことを考えたのは、自身がそこに向かうからだろう。男はありふれた、金とか女とか仕事とかそういう理由で今日自ら命を絶つ予定の者だった。
 一度ガタンと電車が揺れて、男の視界が一瞬真白に染まった。電車が光の中を通ったようだった。
 そして景色が色を取り戻した時、もう少女は居なかった。
「…………」
それでも男は何故か何とも思わなかった。それならそういうことでいいんじゃないかなとおかしな悟りの境地でそれを見ていた。
 少女が一人消えたとて、自身と二人消えたとて、社会は何も変わらない。男は既にそれを嫌というほど知っていた。
 だがその時、男はあることを思い付いた。
 ──何も変わらないなら、せめて自身の死後の評価くらい変えてみたい。
 少女が生きているのか死んでいるのか知れないが、きっともう二度と帰ってこないだろう。そしてありふれた自分は、どうせ彼女の物語にはこれ以上登場しないのだから、代わりに自身の人生の登場人物になってもらおうと一人喉で笑ってやった。
 そうして男は次の次の駅で降りた。郊外の無人駅。近くの山に自殺の名所とされる池があって、構内にも自殺防止を訴えるポスターが貼られていた。
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