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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第2章 神隠しの行く末
──家出? 家出なんてするような子じゃなかった、きっと誰かに拐われたんです! 今日だって、いつも通り普通に学校に──何も変わったことなんてありませんでした!
──でもねお母さん──年頃の子というのは、親にも言えない悩みや秘密なんかを持つもんです。まあ確かに、財布や携帯を置いていってますし、それなら誰か一緒に居たか……。いや、実際……。
──嫌ッ、嫌よぉッ! 聞きたくない! 聞きたくないのよぉ……ッ!!
警察は少女の行方を追えなかった。それを知った少女の母は残された鞄を抱き、傘を投げ出し泣き崩れた。父は何も言わなかったが、妻の肩を抱き唇を噛んでいた。
それ以来、少女の行方はしれなかった。
しかし実際、少女が“消える”瞬間を見ていた者が一人だけいた。一人の男。疲れたような顔をした冴えない普通の中年男。
男は確かに見ていた。自身と向かい合って座っていた少女は、確かに“消えた”のだ。
少女は他のどの乗客とも同じように、誰とも目を合わせずぼうっと外を見ていた。少女の後ろの窓には、幾筋かの光の梯子が掛かっていた。
──あの光の下には神が降臨しているんだな。