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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第4章 底にあるもの
 (……いや、それでいい。本来“禊”はそういうものだ)
少女は昼間、人の穢れとは何かを問うてきたが──できるならばそんなものは知って欲しくない。
 こんなにも暗く、どろどろととぐろを巻くものは……見ない方がいい。
 少女は本当に醜いその感情をまだ知らない。その狂気を知らない。それは幸いなことだ。知らせる気も無い。
 禊はそう気を取り直すと、少女の余韻と眠りを妨げぬよう気配を消して香炉を持ち去った。
 ──明日から忙しくなる。

***

 「……。ん……、あ、ああっ!?」
翌日──昼過ぎまで眠っていた少女は、目に滲んだ光に寝坊をしたことに気付き慌てて飛び起きた。
「あ、起きた? おはよう姉ちゃん」
「わ、童──私、また寝坊しちゃった……怒られるかな? 禊は?」
「ううん、今日だけは仕方ないからいいって一ノ兄が。その代わり、明日からはもう容赦なく叩き起こされると思うけど」
「え……なんで?」
 とりあえず少女は蚊帳から這い出し、食事の代わりに冷たいものをねだって、汗を流しに湯殿にも行った。そしてもうそれが当然のことであるかのように、禊と童に体を預け脱衣から着付けまで全てを任す。
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