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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第4章 底にあるもの
「この襷は何のためにあるの?」
「古来よりの巫女装束の一部ですので、そういうものですとしか。発祥は猿彦様の奥方様がお召しになっていたものらしいです」
「ええっ!? 猿彦さんの奥さん!?」
 そして何気なく聞いたことに、予想だにしなかった答えが返ってきて少女は飛び上がらんばかりに驚いた。それに禊と童は一瞬呆気に取られたような顔をして、それから禊は呆れがちに一つ息を吐き、童は苦笑しながら少女に語る。
「姉ちゃんそれ失礼だって。驚き過ぎ。──俺は見たことないけど、舞とか楽、演劇の神様ですっげえ美人なんだってさ。巫女は祭祀で舞もするから、それにあやかってじゃないかな」
「そ、そうなんだ……」
と、少女はふとあることに思い到って黙り込む。
 (……あれ?)
とくん、と胸が鳴って、何だかものすごく落ち着かない──モヤモヤとした気持ちになる。頭の中が白くなって、その芯がぎゅうっと痛むようにさえ感じた。
 こんなのは嫌なのに、それはどうしても収まらない。
そして、
「……猿彦さんに奥さんがいるってことは……日嗣様にも、いるの?」
禊と童、少女は自分でもどちらに問うたのかも分からないまま、その言葉を口にした。
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