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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第4章 底にあるもの
 ただ少女はその感情が何なのか分からないまま、それでも表に出してはいけないもののような気がして……自身が心安らぐ従者達に嫌われたくない思いから、何事もなかったかのように、笑った。
「……そうだよね。事情はよく分かんないけど、日嗣様と猿彦さんはすごく良い神様達だったもの──きっと、奥さんだってそうだよね」
「まあ猿彦様はな。豊葦原じゃ、奥方様と並んで縁結びの神様としてもお祭りされてるみたいだし」
「へえ……そうなんだ」
 まだ心のわだかまりは消えなかったが、それでも少女はようやく発することができた声と変わらぬ童の態度に安心する。
 しかし──禊にだけはそれが見抜かれているような気がして窺うように見上げれば、やはり彼は自分をじっと見つめていた。
 物言いたげな少女に、禊は適当な用事を童に言い付け離れさせる。
「……禊。私、……やっぱり変?」
「……いえ」
そして二人きりになった空間で少女が呟くように問えば、禊は一旦は短く答え、それから──
「ただ貴女は──まだ幼くて。やはり……可愛らしいものなのだと存じます」
少しだけ視線を反らし、いつものように続けた。
 少女はそれにくすりと笑い、たくさんの気持ちをまとめて、ありがとう、とだけ返す。
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