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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第4章 底にあるもの
 回廊も岩壁に添うようにその幅を狭め、ようやく二人が並べる程度。先頭を禊が歩み、物珍しそうにきょろきょろとしながら歩く少女が遅れないよう、童がその隣を歩いていた。
「姉ちゃん、怖くない?」
「暗いのはちょっと怖い……高いのも。落ちないか心配だし……」
その言葉の通り、下を覗いても暗闇でどうなっているか分からない。ただどこかで川が流れているらしく、深みを帯びた水音が聞こえてくる。あとは所々の岩壁で蝋燭が揺れているだけで、それを辿るように三人は歩き続けた。
 「──あれっ?」
その狭い視界に何かきらりと光を宿すものが突然入ってきて、少女は慌てて目を凝らしてみる。
「ねえ──見て見て童、岩の間で苔が光ってるよ!」
「うん、光苔っていうんだよ。そのまま。でも自分で発光してるわけじゃなくて、ちょっとした光を反射してそう見えてるだけらしいけど」
「へえ……そうなんだ。でも綺麗だねー……」
まるで宝物でも見付けたかのような少女の物言いに、禊と童の世界も少しずつ変わっていく。
 既に数回この道を通ったことのある二人だったが、ただの通り道だったはずのそこに少女の言葉が記憶として刻まれていく。それはあたかも、白黒の世界に色が足されていくような。
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